私たちは小学生や中学生時代に「アルキメデスの原理」たるものを学びます.
水中にある物体は,その質量分の力を上向きに受け,これを浮力という.
みたいなあれです.
これを数式で表せば,\( \displaystyle F=\rho Vg\)となる.
みたいなあれです.
私自身,この式がなんだか腑に落ちず,

なんでさっきまで,押しのけた質量\( \displaystyle M\)の話をしてたのに,急に体積\( \displaystyle V\)が出てくるんだ?
とか

\( \displaystyle \rho\)っていうのは,物体の密度?流体の密度?
みたいな煮え切らない思いをずっと抱いてきました.そこで,つい先日これに向き合いました.
そこで得られた成果について,ここで記録に残したいと思います.これもきっと誰かの助けになるかもしれないという思いの元,書いてみます.
「アルキメデスの原理」とは何か?
そもそも「アルキメデスの原理」とは?について確認します.

wikipediaにいた「アルキメデス」さん.イケイケに描かれてる...
以下はwikipediaからの引用です.
「流体(液体や気体)中の物体は、その物体が押しのけている流体の質量が及ぼす重力と同じ大きさで上向きの浮力を受ける」というものである。
学校の教科書などでもよく見たあれですね.
はじめに
いきなり本題に入る前に,ひとつおさえましょう.
それは「等方性」というものです.
これについて理解できていれば後の話がスムーズに入ってくるので,知り得だと思って聞いてください.

集合体恐怖症の方,ごめんなさい. 図も少々いびつで,几帳面な方ごめんなさい.
まずはこの画像のようなものを考えます.小さなボールが敷き詰められておいてあり,その上に板がのせられています.この板に対して上から力を加えることを考えてみましょう.

このとき,個々のボールはつぶされまいとして,必死に反発するわけです.このとき,このボールで起こっていることは一つ,ペチャンコにならないように四方八方にまったく同じ力で踏ん張って押し返しているわけです.つまり,図で書けば下のような感じです.

玉ひとつひとつがあらゆる方向に押し返している
四方八方の方向に対して,同じ力で押し返しているわけです.これを圧力の等方性などと言います.ここでポイントなのは,このボールが上から押されているからと言って,
ということです.全方向に対して同じだけ力が反発しています.これが大事です.
この考え方をまずは踏まえましょう.
導出
では実際に考えていきます.

よく見かける水中の物体が受ける力の図.これについて解明していく.
まずは水中に沈んだ物体を考えます.

扱いやすいため,水面を\( \displaystyle 0\)として高さ方向に\( \displaystyle z\)座標をとります.上面を\( \displaystyle z=z_1\),下面を\( \displaystyle z=z_2\)としています.
これらの値の差を\( \displaystyle \Delta z\),底面積を\( \displaystyle A\)と置けば,この物体の体積は$$ \displaystyle
V=A\Delta z
$$と書くことが出来ます.ここまでが下準備です.
物体にかかる力とは水の柱の重さ分と考える
では実際に考えていきますが,まずはこんな考え方をしてみましょう.

沈んでいる物体の上面にはどのような力がかかっているのかを考えてみます.
このとき,考え方として,
と考えてみます.そうすれば,この重さ分だけ物体には力がかかっているはずです.

水の柱の高さは\( \displaystyle z_1\)ですから,水の柱の体積は\( \displaystyle Az_1\),水の密度を\( \displaystyle \rho\)とすれば,質量は\( \displaystyle \rho A z_1\)と書けるはずです.重力加速度を\( \displaystyle g\)をすれば,物体にかかる力は$$ \displaystyle
\rho A z_1 g[N]
$$のように考えることが出来ます.
つまり,この物体には上から\( \displaystyle \rho A z_1 g[N]\)の力で押されていると捉えることが出来るわけです.
同様に下の面についても考えてみましょう.上の面と全く同じように考えます.

そうすれば,下の面にも同じように$$ \displaystyle
\rho A z_2 g[N]
$$の力がかかっていると理解できるでしょう.ここで「等方性」について思い出してみましょう.

これが今考えている物体の下面であると考えてみます.
確かに上から力を受けていますが,物体のことを押しているのは高さ\( \displaystyle z_2\)の水の柱ではありません.
なぜならそもそも高さ\( \displaystyle z_2\)の水の柱は仮想的に考えていただけであり,これでは元の物体とかぶさってしまっています.
では下の面に力を加えているのは何かと言えば,上の図で書いた押しつぶされている水分子です.こいつらが押しつぶされまいとして,物体のことを上向きに押しているのです.
このことを踏まえれば,力の関係は以下の図のように書くことが出来ます.

$$ \displaystyle
\begin{aligned}
&\rho A z_2 g – \rho A z_1 g \\
&= \rho A (z_2 – z_1) g \\
&= \rho \underbrace{A \Delta z}_{V} g \\
&= \rho V g
\end{aligned}
$$さて,先ほど\( \displaystyle V=A\Delta z\)と定義したことなども含めれば,結局この式のように書けることが分かりました.なんで勝手に\( \displaystyle \rho A z_2 g > \rho A z_1 g \)で考えてるんだよ!と思った方がおられるかもしれませんが,それは水深が深いほうが水圧は大きくなるといったことを用いています.
水圧は,水深が深いほうが大きいのであれば,作用する力も水深が深いほうが大きいはずです.なぜなら「水圧」とは圧力であり,これに面積をかければ力に変換されるのですから.
このことを理解できれば,ここでいう密度\( \displaystyle \rho\)とは水の密度であることも分かりますし,体積の項\( \displaystyle V\)が出てくることも自然と理解できるようになったのではないでしょうか.
この記事が,少しでもあなたの理解の補助になったのであれば幸いです.

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